我が国で現在承認されているGMOトウモロコシの種類と、米国で栽培されたこれらトウモロコシが我が国に輸入されるまでを見てきた。

相場等に左右され、また過去には高騰して一騒動あったとはいえ、通常は「大量」に「安定的」に「安価」で輸入できる体制が構築されている米国産トウモロコシ。
米国では輸出に関わる安全性確保のための管理システムの運用と監視がなされており、我が国でも港湾サイロや飼料メーカーには公的機関の有害物質等モニタリングが実施され、飼料メーカー自身も製品の工程管理の中で安全性を保持している。

もとより日本に持ち込み可能なGMO作物は、すべて科学的な見地からの安全性評価がなされたものであり、未承認のGMOは輸入禁止である。
数年前に未承認のカナダ産GM亜麻の遺伝子が極めて僅かに検出され、大騒ぎになったことは記憶に新しい。

以上、客観的に事実のみを書いた。脚色はないつもりである。
いささか簡単に過ぎてプロの方々には物足りなかろうけれど、生化学系のベースをお持ちでない一般市民各位にはこれでさえ難しい部分もあったことだろう。
少なくともこの程度まで理解していなければ、ものは言えないと思っているが、但し「好き嫌い」は別の次元の話であることは当初に書いた。

現状を理解する事は必要と考えるものだが、今後もこれを維持すべしと言いたいわけではない。
国産飼料の自給率の向上は、もちろん大賛成である。
コストが見合うのか、多少のコストアップがあっても生産者に国民に許容されうるのであればそれで良い。
食料もエネルギー同様に、あまりにもの海外依存に目をつぶることはできない。

これら一連の記事はGMOやトウモロコシの輸入、或いは国産自給飼料を論じようとする際の基礎知識として、私の頭の整理も兼ねてまとめたものであることをご理解いただきたい。
(とりあえず、お終い)

日本の主要な穀物積み降ろし港は、鹿島港(茨城県)、志布志港(鹿児島県)が物量的には突出している。
その他は北から釧路、十勝、苫小牧(共に北海道)、八戸(青森県)、名古屋、水島(岡山県)、鹿児島がある。

これらの港湾施設の多くには、バルク船から穀物を直接吸い上げるニューマチックアンローダーと巨大な穀物サイロ群からなるグレーンターミナルが置かれ、後背地の飼料コンビナート等にコンベアでトウモロコシを供給する体制が整っている。
また、パナマックス級バルカーが入港できない水深の浅い地方港に向けては、内航船への積み替えも行われる。

またコーンスターチ向けトウモロコシの輸入港では、専門メーカーの工場が位置する田子の浦(静岡県)や、名古屋、鹿児島がある。
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これもGoogle地図で見てみよう。
写真は、鹿島にあるグレーンターミナルにバルク船が到着したところである。サイロの前には穀物を吸い上げるニューマチックアンローダー装置が見えるし、後背地にある各社の飼料工場に伸びるコンベアも見える。

穀物資源を海外に頼らざるを得ない我が国では、大手商社が米国穀物メジャーから買い付けたトウモロコシを超大型ドライバルカーで海上輸送し、港湾のグレーンターミナル業者は飼料製造業者群と共に飼料コンビナートを形成して、陸上輸送コストをかけずにこの原料を受け取って製品化する輸送費削減戦略を選択し、推進してきたわけなのだ。

また、国(財務省、税関)も関税定率法による「飼料製造原料品の減免税制度」を用意、該当する飼料工場を「承認工場」と位置付けて、関税を免除(免税)している。
この制度は、「わが国の畜産農家に対して、良質かつ低廉な飼料を継続して安定供給するため、国内生産量の少ないトウモロコシ等の飼料製造用原料品を外国から輸入する際、本来課されるべき関税を(軽減又は)免除し、これに寄与しようとするもの」と説明されている。

輸入原料である限り、米国の穀倉相場や為替の乱高下、そして海上運賃により国内飼料価格が翻弄される構図には変わりがない。しかし、我が国や港湾・飼料業界による長年のこれら努力の積み重ねが、飼料の低コスト供給の基盤となっていることは否めない。(続く)

GMOトウモロコシについて長々と書いてきたが、これらは飼料原料として、またトウモロコシ澱粉(コーンスターチ)として、また酵素処理して液糖として等、幅広く日本国内で使われている。

「遺伝子組み換えでない」の表示を見せられれば、何かGMOが悪者のように目に映るのだが、すでに日本人は日常のいたるところでGMOトウモロコシ起源の原料が含まれる食品を摂取しているのが実情である。

さて、この米国産トウモロコシ、大半がGMOであるが、これが日本に届くまでを見てみたい。

日本は世界最大のトウモロコシ輸入国である。我が国が海外から輸入しているトウモロコシは年間1,500万トン、現在その3/4が米国産(USメイズ)であり、うち8割は飼料原料となり、残りは食品や澱粉(コーンスターチ)向けに加工されている。

US
メイズは、米国の所謂コーンベルト(アイオワ州を中心とする中西部)で収穫される。穀倉地帯からは陸路でミシシッピー川やその支流のイリノイ川沿いに建設された集積乾燥施設(カントリーエレベーター)に運ばれ、ここからバルクカーゴ(艀:はしけ)に積み替えてミシシッピー川を下り、バトンルージュからニューオーリンズ周辺にある穀物集積施設(ターミナルエレベーター)で最終的にパナマックス級の超大型ドライバルカー(穀物専用のばら積み船)に積まれてメキシコ湾に出る。

日本への輸送には太平洋側に出る必要があるため、カリブ海からパナマ運河を通過する。このパナマ運河の閘門(こうもん)を通過できる最大サイズに設計された船型規格が、パナマックスである。このルートでは、収穫地からカントリーエレベータまで一ヶ月、ミシシッピー川を下り穀物集積港まで一ヶ月、そしてパナマ運河を通過して日本に届くまでに一ヶ月、合わせて三ヶ月が必要である。

ちなみにパナマ運河が開通したのは1914年であるが、2016年には更に大型の船舶が通過できるよう拡張と浚渫、航路の追加が行われ、船型制限値も拡大(ニューパナマックス)された。

一方で、穀倉地帯から鉄路で西海岸まで運ばれ、タコマ等の港湾から太平洋に出て輸出されるルートもあるが、パナマ運河経由に比べてその割合は少ない。
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Google地図やGoogleEarthで、パナマ運河を見てみる。
航空写真に切り替えれば、閘門の幅一杯に通過中のパナマックス級ドライバルカーを見ることができるだろう。
またニューオーリンズを流れるミシシッピー川、その上流のバトンルージュまでを眺めてみると、河岸にカーギルや全農グレインなどの巨大な穀物集積基地が発見できる。ここで艀で集められた穀物を集荷してドライバルカーに積み替えるのだ。
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そしてミシシッピー川に浮かぶ無数の艀の連なりも見えることだろう。これらを辿っていけば、遥か上流の五大湖の下あたりにカントリーエレベータを見つける事ができるかもしれない。
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次に、我が国での受け入れを見てみよう。(続く)

GMOの害虫抵抗性には、つい最近になってRNA干渉(RNAi)技術が導入された。

このRNAiを発見した二人の米国人科学者に、2006年ノーベル生理学医学賞が贈られたのは記憶に新しい。ノーベル賞は、もちろん虫退治が理由ではなく、RNAiが新薬開発に遺伝子治療に道を開いたとして評価されたのである。

相同配列としたRNAiを細胞内に送り込めば、狙ったmRNA(メッセンジャーRNADNAから遺伝情報を写し取ってリボソーム上で特定の蛋白質を合成する役割がある)を分解することで「任意の遺伝子の発現を抑え込む」ことができる。これは確かに大発見なのだ。

特定の害虫を殺虫することは比較的たやすい。しかも植物体にRNAをスプレーしておけば、これを齧った甲虫が死ぬ、つまり経口摂取で効き目があるなどと発表されて、世界中で開発競争が進められているという。(コスト低減が課題とか)

mRNA
だけに作用するので特異性が高い(その部位にしか働かない)ので、極めて安全であるとされ、すでにモンサントのGMOトウモロコシには二本鎖RNAを発現するように調製した部分配列が組み込まれたものがある。(日本では平成25年に申請、平成28年に承認済み、既に我が国にもこのGMOトウモロコシが輸入されているはずである)

この二本鎖RNAは、トウモロコシを齧ったウエスタン・コーンルートワーム(ネクイハムシ)の細胞に入り、RNAiを発現。細胞機能維持に欠かせないある遺伝子を狙い撃ちにして殺虫活性を示す。これまた素晴らしい発明と言わざるを得ない。

では、このRNAiではBTのような抵抗性は起こり得ないのか。
悪い予感がしなくもないが、この品種にはBT遺伝子も組み込まれており、このRNAi技術で人類はウエスタン・コーンルートワームを克服できるのかもしれない。

さて、GMOトウモロコシは、このぐらいにしておこう。
次は、我が国に大量に輸入されている米国産トウモロコシ(USメイズ)について、その輸入ルートを確認してみたい。

次に害虫抵抗性を見てみよう。

BTコーンとは、昆虫に対して病原性の細菌:バチルス チューリンゲンシス(BT菌)の殺虫タンパク毒素(Cry毒素)を発現する遺伝子を組み込んだトウモロコシである。

BT菌は、その遺伝子が作物に組み込まれる数十年前に微生物殺虫剤として開発され、効果を発揮してきた。昆虫と哺乳類とでは消化管のメカニズムが異なるため、BT菌もCry毒素もヒトには無害であるから、これも素晴らしい発明である。

このBT菌にも数十種類の系統があり、産生されるCry毒素にもいろいろな種類がある。先の一覧表にある申請者が提出した書類には「Cry1F」「Cry1Ab」(チョウ目害虫抵抗性)とか「Cry34Ab1」「Cry35Ab1」(コウチュウ目害虫抵抗性)などと書かれているが、これらは各種Cry毒素の蛋白質名であり、害虫に幅広く対応するために組み込まれてきたものである。

このチョウ目とは具体的にはアワノメイガを指している。
この害虫は長い周期で発生の変動があったが、BTコーン以後は一貫して減少しているという。

そしてコウチュウ目とは具体的にはウエスタン・コーンルートワーム(ネクイハムシ)を指す。
この虫は厄介で、卵で土の中に潜み、種が発芽したところで孵化して根を食害してトウモロコシを枯らしてしまう。そのため、米国の穀倉地帯では次年の虫の発生を回避するため二年目はトウモロコシ以外の作物を作る、つまり輪作せざるを得なかった。

それが新たなBT組み込みでトウモロコシの連作が可能になったのだから、これは生産者にはこの上ない福音だったろう。
しかし、この虫目当てのCry毒素を組み込んだGMOトウモロコシでは、数年後には虫が抵抗性を発達させて防除効果が低下していることが示されていた。虫は、中腸上皮細胞に点在するCry毒素受容体を、自ら変えたのである。

そこでGMOの害虫抵抗性は、つい最近になって更に進展を見た。RNA干渉(RNAi)技術の導入である。(まだまだ続く)

まず除草剤耐性から見てみよう。

ラウンドアップはモンサントによる商品名であり、成分名は「グリホサート」、芳香族アミノ酸系除草剤と呼ばれる。
葉にかかって植物に取り込まれると、芳香族アミノ酸の生合成を阻害するので植物は生きていけなくなる。非選択性の除草剤だが、ヒトへの毒性がない普通物であり、発がん性もどうやらなさそうである。土壌での分解も早い。発表当時は、安全で効果的な凄い除草剤ができたと驚いたものだ。

よく似た名前だが「グルホシネート」は、ヘキスト社(その後はバイエルクロップサイエンス社)が開発したアミノ酸系除草剤である。
植物では、すべてのアミノ酸がグルタミンから作られるが、この薬剤はグルタミン合成を阻害する。植物が吸収した窒素は、硝酸亜硝酸アンモニアグルタミンと姿を変えるのだが、グルタミン合成ができなくなれば植物体にアンモニアが溜まってしまい、植物は生理機能を止められて枯れてしまう。
これも非選択性だが、毒性はある。

「ジカンバ」は、芳香族カルボン酸系の除草剤。
オーキシン様の植物ホルモン作用により細胞分裂を乱して生育を抑制、植物を枯死させる。毒性が強く、しかも揮発性が高いので周囲の植物まで漂っていき(ドリフトという)被害をもたらすとして評判は良くない。

評判が良くないと言えば、最強に良くない?のがアリルオキシアルカノエート系除草剤で、かの悪名高き枯葉剤の成分の一つ「2,4‐D」のことである。
これも植物ホルモン作用により異常な細胞分裂を発生させることで植物を枯死させるが、イネ科などにはあまり影響がなく(選択性)毒性も低いので、実は水田や芝の除草に広く使われている除草剤だ。
ちなみに、米軍が使用したベトナム戦争における枯葉剤の毒性は、副産物として含まれていたダイオキシン類によるものと言われている。

当初のラウンドアップ・レディーで話が済めば良かったのだ。
このGMOと除草剤ラウンドアップを組み合わせれば、GMOは死なずに雑草は枯死する。生産者は除草剤を削減できて、作業も省力化できる。何て素晴らしい。
しかし10年ほど過ぎたら、そうは行かなくなった。雑草が自らの遺伝情報を変えて対抗しだしたのである。これらはラウンドアップでは死なない「スーパー雑草」と呼ばれている。

そこでGMOにも、「アリルオキシアルカノエート系除草剤」耐性(ダウ・ケミカル日本)や、「ジカンバ」と「グルホシネート」耐性の組み合わせ(日本モンサント)、「グリホサート」と「グルホシネート」耐性の組み合わせ(シンジェンタジャパン)が登場してきた。
毒性のない「グリホサート(ラウンドアップ)」だけでは既にスーパー雑草に対応できないとは、面倒なことになったものである。

次に害虫抵抗性を見てみよう。(まだまだ続く)

何と!ゲノム編集のヒトの子が生まれたのだという。
人間の好奇心は止めようもなく、またこの若き研究者の功名心も計り知れないが、すぐさま中国政府当局者が断じた通り、これはアウト。してはいけないことだったはずである。

まあ、いずれは、何でもありの中国から出てきそうな予感はあった。

さて先日、農研機構による「機能改変昆虫の産業利用の可能性」講演を聞いてきた。ゲノム編集の「今」が判るとても興味深い内容だったので、カミサンを含め周囲にその感動を触れ回ったのだが、反応があまり顕著でない。

つらつら考えるに、生物系の教育を受けた基盤が無ければ、理解しがたいのであろう。
遺伝子組み換えやら、ゲノム編集やらが、そもそも何のことかわからない。私も良く分かっていないクチだが、今の我が国に既にさんざん輸入されている遺伝子組み換えトウモロコシについても、実情を判っていない。或いは漠然と知っていて知らぬふりをしているのだろうか。

で、私自身の頭の整理のために、まずは輸入トウモロコシの現状などをまとめてみようと思い立ったのである。
配合飼料メーカーに籍を置いているが、自己満足に、自己欺瞞に、自己正当化にならぬよう、事実を書き留めておきたいと考えた次第である。

ちなみに、私は遺伝子操作は嫌いである。
しかし、好き嫌いと科学的な評価は別だとも認識している。
この辺りを混同している人が多いのが残念であって、たとえ嫌いでも科学的に(その時点では)問題なければ認めざるをえなかろうというのが、私の信条である。自然科学はパラダイムシフトがツキモノだから、評価が突然変わることもある。しかし、その時々の判断に身を置かねば、その思想は漂流してしまうことだろう。

まずは、GMOトウモロコシの現状から始めよう。
遺伝子組み換え作物はGMOGenetically Modified Organismと呼ばれている。
平成301019日現在、我が国内で飼料原料として認められているGMOは、トウモロコシだけ見ても29品種ある。これは、独立行政法人)農林水産消費安全技術センター:FAMIC(通称、読みはファミック)のサイトで一覧表として確認できる。

申請者には、シンジェンタシード株式会社、バイエルクロップサイエンス株式会社、日本モンサント株式会社、デュポン株式会社、そしてダウ・ケミカル日本株式会社がある。
ちなみに、本国ではモンサントは2018年にバイエルによる買収が完了しており、社名は消滅している。また、デュポンは2017年にダウ・ケミカルと対等合併していて、新会社の名前はダウ・デュポンである。

さて、このGMOトウモロコシは大きく三つの性質に括ることができる。
つまり「除草剤耐性」「害虫抵抗性」そして「その他の機能性」である。
最後の「その他の機能性」には「高リシン」「α‐アミラーゼ産生性」「乾燥耐性」「収量増大の可能性の向上」があり、順に必須アミノ酸が多かったり、澱粉分解酵素を持ちバイオエタノールに有利だったり、乾燥条件にも耐えられたり、収穫量の向上が期待されるものである。

我が国では2003年に認可され始めたこれらGMOトウモロコシだが、何といっても名前を売ったのは所謂「ラウンドアップ・レディー」と「BTコーン」である。しかし、この一覧表をよく見れば除草剤はラウンドアップだけではなく、また害虫耐性にもいろいろあることが判る。

まず除草剤耐性から見てみよう。(沢山続く)