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今日の午後から、千葉市内で開催されたセミナーに参加してきた。
全国を9地区に分けて、関東では10都府県で実施されたきたセミナーで、千葉が最後である。
比較的狭い部屋で、120名の満席参加であったとか。
バイオマスとは言っても、今回はバイオエタノールに絞った内容で、基調講演の後に事例発表が二題の構成だった。(以下、あくまでも私の捉え方です、悪しからず)

東大大学院の五十嵐教授の基調講演。最先端の学識と諸外国での知見、自らも長野県信濃町で地域完結型のバイオエタノール生産を手がける氏の話は、メリハリ良く現実的でとても面白かった。
バイオマス利用においては、エネルギー生産を化石資源からバイオマス等の持続型再生型資源にシフトすべき事が主題であって、有機性廃棄物(資源)は(処理の過程でエネルギーが回収できるのならそうしても)所詮は廃棄物処理として捉えるべきである。これらを混同してはいけない。
バイオマス利用には、農業(農村)振興を目的として強く意識すべきである。
我が国では、今まだ世界に存在していないソフトバイオマス糖化技術と、イネのトータル利用システムが今後キーテクとして重要である。
バイオマス糖化については、個々の研究者が各地で頑張るのでなく、戦略的に研究拠点を立ち上げ、日本・アジア発のオリジナル技術としての開発が必要である。
ひとつひとつのバイオマス利用技術だけでなく、物質の流れ全体を制御するシステムの導入が必要である。等々示唆に満ちた講演だった。

三菱商事の谷氏による、同社バイオエタノールの事業展開。流石は商社の立場から、世界の中の日本、日本の中で同社が成すべき事を、効果的で簡潔な資料で説明した。
国内にあっては、まず疲弊した農業の振興策として、次に京都議定書実現等の環境対策としてバイオ燃料の製造技術・製造ノウハウの確立を図り、もって将来的にはアジア圏(バイオマス資源が豊富)でのバイオ燃料製造事業につなげたい、との事だった。

最後に、株式会社りゅうせきの奥島氏による、宮古島での廃糖蜜エタノール事業の紹介。
実規模実証による、耐塩・凝集性酵母による連続発酵、ゼオライト膜による低コストで高効率のエタノール脱水技術などが面白く、とにかく実験ではなく事業としてペイさせねばならぬとの気迫が感じられる講演だった。
現状のガソリンの品質確保法の成立背景、E3燃料の現状、FFV(フレキシブル・フューエル・ビークル)の説明がなど勉強になった。
現在の我が国は、各省がバラバラに施策を推進しているが、エネルギー戦略と言うのなら目的を明確にした法制化が必要である」との意見は納得できた。

質問の時間となり、あまり触れられなかった「飼料化」について手を挙げようかなとも考えたが、五十嵐教授の「この国では現実的な規模でバイオエタノールを作ったことがない。ある程度の規模で実証してみて、ようやく何が問題かが判る。一刻も早く取り掛かることだ。」との発言があり、誠にごもっともで、皆の発言も封じられてしまった格好だった。
今日の夕刊によれば、農水省はバイオエタノールなどの生産を支援するため、バイオ燃料の製造工場を農業用地に建てられるようにしたり、補助金を製造業者に支給したりする計画だ。
あれはダメ、これはダメの決め事が多い我が国には珍しく、法令を設定整備して結果を誘導する、所謂インセンティブな立法姿勢は評価できる。

しかし、ことバイオエタノールについては、私には大きな危惧がある。
現在の米国のとうもろこし由来のバイオエタノールの進展は、食料と競合する、他の作物がとうもろこしに雪崩込む、そら穀物価格が高騰した、配合飼料価格も上がったと大騒ぎだが、しかし副産物のDDGS(ドライド・ジスチラーズ・グレイン・ウイズ・ソリュブル、つまり乾燥させた可溶物を含む蒸留副産物といった意味)が、家畜用の飼料として有効利用されており、つまり第一世代のバイオエタノールは、廃液は出ずに非常に「穀物の利用効率が高い」のは事実だ。

現に、我が国も配合飼料の蛋白質原料(炭水化物はエタノールになっているので)としてDDGSを使っているし、EUも同様だ。EUなどは、自国でバイオエタノールを生産する意義の一つとして「米国からDDGSを輸入しなくて済む、飼料原料の米国依存を軽減できる」ことを挙げているくらいなのだ。

我が国でも、第一世代のバイオエタノール施設がいよいよ稼動し始める。北海道ではホクレンが十勝清水で甜菜と小麦から、苫小牧ではオエノン・ホールディングスが米から、そして新潟でも米からバイオエタノールが生産される。そして、おそらく副産物の飼料化も可能であろう。

しかし、第二世代、リグノセルロース系と言われる原料(米国が目論む「牧草」ならまだしも、我が国の廃木材、風倒木、未利用の竹材、或いは生ごみ、家畜糞など)から得たバイオエタノールは、副産物はどうしてくれるのだ。蒸留物のエタノールは良いが、廃液はもちろん飼料化できない。蒸留残渣は原料がピュアなものでなければ利用できないのだ。

酵素剤と改良酵母で、第二世代も目前だとの話も聞くが、バイオガスで失敗した廃液処理のツケを、バイオエタノールでも繰り返してはならないだろう。廃棄物が形を変えて、より手に負えない液体廃棄物として提出される事態は、何としてでも避けねばならない。
3/20霞ヶ関で開催されたフォーラムWorld Biofuel Policy Forum in Tokyoに出席した。
農林水産省環境政策課と農林水産政策研究所の主催であった。

報告者とパネル出席は、
ブラジル大使館一等書記官、米国農務省経済研究局上級エコノミスト、欧州エタノール生産組合理事長、フランス農業省バイオマス・バイオ燃料課長。
そしてこの分野での最「後進国」と言える我が国からは、農水省環境政策課、農林水産政策研究所主任研究官、パネルの司会は日大生物資源科学部教授と言った顔ぶれだった。

英語・仏語の同時通訳を付けて10時から17時を過ぎるまでのボリュームで、大変充実したフォーラムだった。詳細はとても書ききれないが、以下に概要を記す。
これは「私はこう聞きました」と言うもので、事実と異なる表現があればお詫びします。

当日の結論として、今後の日本の方向(農水省の思惑)が示された。
むりやりまとめれば、
・日本での第一世代バイオエタノール原料としては、米、ムギ、甜菜であり、特に多様的価値のある米に期待。
・将来的には第二世代のリグノセルロース原料こそ、日本が積極的に技術開発を進めるべき。
・エタノールの燃料への利用は、ガソリンへの直接混合方式で良く、ETBE技術はもはや価値がない。といったところか。

○ブラジル
シュガーケーン由来バイオエタノール分野で、国内のガソリン代替で30年の歴史と、EU・米国への輸出など、圧倒的な実績を持つ先進国ブラジルが、いかにも自信たっぷりに述べていたのが印象的だった。
所謂「第一世代:糖質や澱粉由来」のバイオエタノールについて、今後も自国での拡大を進めつつ、且つカリブ諸国やアフリカ諸国にも技術供与しており、その狙いは「バイオエタノールの国際市場を形成し、その中心的役割を担う」ことにある。
BDF(バイオディーゼル燃料)では遅れていると言いながら、大豆由来や、新規の油糧作物(既に有望な作物を見出しているらしい)にも熱心に取り組んでいる。
第一次石油危機を契機に取り組まれたバイオエタノール事業は、ブラジルの農業国としての伝統「困ったときは農業で活路を見出す」によるものとか。
大規模な耕地面積を持ち、農業国としての基盤があり、輸出立国で、これを推進する強い政府が、成功の条件であるとのこと。
熱帯雨林やアマゾン流域の無分別な開発によるものとの非難があるが、これらは土壌条件や輸送インフラに劣り「さとうきび」栽培には不向きであり、実際には適地の耕地を開発して生産されている。環境破壊ではないことを力説していた。

○米国
政策転換でとうもろこし由来エタノール増産に拍車をかけ、世界一の生産量に躍り出た米国は、しかしバイオエタノールの最大輸入国でもある。
古くはT型フォードをエタノールで動かした伝統も、禁酒法とその後の石油依存で失われた。
73年のオイルショック、90年の改正大気浄化法、06年のブッシュ大統領の一般教書演説で明確な方向性が打ち出され、インセンティブも充実されて一気に加速した。
背景には中東情勢を睨んで石油依存度の軽減と、エネルギー安全保障の考えがある。
06年のエタノール生産能力は全国で56億ガロン、建設中の工場の生産能力を含めると62億ガロン、原油価格を50ドルと見たときに2017年には120億ガロンの生産予測を持っている。
昨年からエタノール生産がとうもろこし相場に影響するようになったが、今後は牧草、とうもろこし穂軸などリグノセルロースへの取り組みを進めてゆく。
これらは2010年には実用化できると考えている。
さとうきび、シュガービートは、米国では経済性が無いと判断している。
穀物を原料とする第一世代バイオエタノールは食糧と拮抗するとの批判があるが、副産物のDDGSは飼料原料として無駄なく消費され、むしろ利用効率、経済性共に優れている。
米国ではエタノール混合ガソリン(直接混合)方式を推進しており、ETBE(エチルターシャリーブチルエーテル)方式は、先に導入されたMTBE(メチル以下同)による環境汚染問題がトラウマになっており否定的である由。

○EU
バイオディーゼル(BDF)では先行しており、バイオエタノールは後発ながらも取組みを加速するEU。
カーボンニュートラルによる温暖化防止や石油価格の低下など、代替燃料としての価値のみならず、農業生産の新たなアウトレットを提供し、且つ新しい雇用を創出する効果があるという。
また米国DDGSへの飼料依存度を下げられる期待がある。
資源作物は、小麦などの穀類とシュガービートである。
2020年までにEU加盟国には10%のバイオ燃料使用義務が課せられたが、これは決して楽な目標ではない。
バイオエタノールの国際的な市場形成が重要であるが、持続的農業によってもたらされたものであること、環境破壊を伴わないなど、不適当な生産体制を監視する認証制度が必要である。
第二世代はあくまでも第一世代を補完するものだが、第二世代技術の開発が急がれる。
食糧との競合を避け、また作物を多様化させる必要がある。

○フランス
基本的には上記のEUと同様。
ディーゼル車が多いフランスは、今後ともBDFが主体となる。
バイオ燃料は車にとって唯一の再生可能エネルギーである。
バイオ燃料の是非を問う時期は過ぎた、どうやって使ってゆくのかを国際的に協調してゆく時期に入っている。
2006年には、国内の全ての燃料に3%のバイオ燃料を混合した。
今後はB30(バイオディーゼル30%混合)と高濃度エタノール混合「スーパーエタノール(フレックス)車」を推進しつつ、E10(エタノール10%混合)とB10についても検討を進める。
スーパーエタノール車向けフレックス燃料開発については、著名なアラン・プロストを指名擁立して推進しており、自動車メーカーの協力も得て2010年には結果を出せる。
エタノールについては第二世代の開発を急いでおり、2020年にはバイオ燃料の1/3を担わせたい。
EUはこれまでETBEを進めてきたが、今後はエタノール利用は直接混合方式と自動車の改良で望むべきである。施設が必要なETBEは途上国では利用できず、ETBEには未来はない。
何かを成すには必ず問題が生ずるもので、否定的だったEUの自動車メーカーも今ではE10が可能と言っている。古い自動車で対応できなければE10不可を表示すれば済むことだ。

○日本
最後進国たる日本では、税制上のインセンティブはない、エタノール生産量も試験規模に甘んじており、混合義務化がようやく見えてきたものの「まだE3で実証試験が必要」などと言っている状況だ。
この1月に総理の施政方針演説で「バイオ燃料の利用率を高めるための工程表の策定」を言明、バイオマス・ニッポン総合戦略として総理に「大幅な生産拡大に向けた工程表」を報告、ようやく動き始めた。
日本でバイオマスに取り組む意義は国産であること。
国内原料を最大限に利用し、民会企業による施設稼動を後押ししてゆく。
第一世代向け作物としては、重量当たりのエタノール製造量が一番大きい米とムギ、耕地面積当たり製造量の高い甜菜が有望である。
わが国には持続的農業として世界に誇る水田システムがあり、その環境保全等の多機能性にも期待して多収米を検討したい。
第一世代の開発は、これを第二世代につなげる意味からも重要である。
第二世代向け原料としては木質系の有効利用である。
第二世代こそ発酵技術をお家芸とする我が国が、食糧と競合しないリグノセルロース由来エタノールの技術開発に注力すべきで、木質系原料については「集める技術」の検討が重要である。
国際的な現状を踏まえて、エタノールの利用はETBE(EUで実績があり、石油連盟が強く推奨している)ではなく、ブラジルや米国で実証されている直接混合方式を推進すべきである。

※ETBE(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)
エタノールを加工してETBEを作り、これをガソリンに混和して使用する。
ガソリンにエタノールを混ぜる(直接混合)と、いろいろな問題が起こりうるとして、ETBE方式が推進されてきた経緯があるが、要するに「バイオエタノールを如何にして使うか、との見地に立てば些細な問題」ということか。国内では業界の既得権も絡んで?議論が続いているが、農水省としてはバイオエタノール推進の立場から「米国方式(直接混合)で良いではないか」と言いたいところ。事実、当日のEUやフランスの担当官は、「これまではETBEしかなかったので使っていたまで」「施設の必要なETBEは途上国では使えない」「ETBEには未来がない」と言い切っていた。
お客様の訪問と、飼料原料の打ち合わせで熊本へ。
おっ、ここでも風力発電が並んでいた。阿蘇の外輪山の、風の通り道でゆったりと回っている。
風力はバイオマスとは親戚すじ、所謂「再生可能エネルギー」の仲間だ。
日本では、急峻な山々が多く、設置工事が大変で、しかも台風や雷、地震も多い。
欧州にくらべて風力発電は立地上で苦戦しているようだが、頑張って欲しい。
一昔前とは違って、発電能力は桁違い(今はメガワット級)に進化しているそうである。
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国道126号線を千葉に戻る。
銚子の名産、キャベツ畑の向こうに、風力発電のタワーがずらりと並んでいる。
キャベツ畑と風力発電、銚子ならではの風景ですね。
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バイオガスの専門の方と話した。
シンプルなバイオガスシステムは、一槽式、つまり発酵タンクは大きいのがドカンと一つだけ。
ドイツなどで、発電農家が自ら開発して使っているのは、このタイプ。

本当は、メタン発酵タンクの前段に『有機物をある程度分解しておくタンク:可溶化槽とか言う』があったほうが、その後のメタン発酵の効率も良いのだが、コストがかかり管理も難しい。

本当は、タンクを加温して高温域でメタン発酵させたほうが効率が良いのだが、これも管理が難しくなる。微生物君達がへそを曲げると、なかなか元に戻らないようだ。

メタン菌は液中のアンモニア濃度が高まると、阻害されて発酵効率が悪くなる。一槽式では水で薄めて濃度が高まらないようにしているわけだ。
これも本当は、アンモニアを中和したり、ろ過膜で取り除いたほうが良く、このメーカーさんではメタン発酵の前にアンモニア発酵をさせて取り除き、これで硫安などの肥料を作り、その後は高温メタン発酵させるので、とても炭素のメタンへの転換率が良いのだそうな。
窒素がアンモニアとして事前に回収されてしまうので、つまりCN比の調整がいりません!

この技術者さん曰く、業界では前記の一槽式のことを、通称「馬鹿タンク」と呼んでいるのだと。メタンの発酵効率は悪いが、面倒な管理が不要で、気にせず何でも放り込める、からだろう。

可溶化槽、高温発酵、アンモニア除去、等々、確かに研究開発は素晴らしい。
しかし、どんどん素人が扱えなくなって、システムは複雑巨大になって、コストも高くなる。

私は家畜糞尿処理の立場なので、「馬鹿タンク」がいい。
農民が、市民が、日々の生活の一部として、タンクの中の微生物と対話しながら、ゆったりと、おおらかに管理できるシステムがいい。

この技術屋さんに、恐る恐る言ってみた。私もそう思うと答えてくれた。良い人である。