7/24 不確定世界の探偵物語

f0057955_144928.jpg創元SF文庫 鏡明 著。初の文庫化だそうだ。

そもそも、この方は本業の小説家ではないはずで、私の学生時代の昔から、当時和気藹々とやっていた中央のSF同盟者の中心部に身をおき、作品を発表しながらもアマチュアとしての立場で、しかし訳書もこなし、ファンダムでは中心人物として作家連にも一目置かれていた方と記憶している。

世界にただ一台のタイムマシン、この所有者が半ば神となって歴史を改変してゆく。人々にとっては、過去の厄災から自動的に回避され、大量破壊兵器も発明され得ぬ、安全でしかし一種退廃的な近未来。この世界観の中で、この装置の影響で失われた国に生まれたらしい主人公は、私立探偵として、ある事件をきっかけにこの装置ワンダーマシンの所有者との関わりを深め、都度に発生する事件にも否応無しに巻き込まれてゆく。

SFとしても、ハードボイルド探偵ものとしても、良く出来ている。
独特の世界観を築き上げた上での一連の短編が8話。
完全に説明されない謎を残しながらも、物語の進展と共に謎解きもあってとても面白く読んだ。
1980年代に連作されたものだが、まったく古さを感じさせない。
当時からSFを知り尽くした、頭の良い方の構成力に優れた作品である。
最近のSF世界については、どうお考えなのだろうか。一度聞いてみたいものだ。
by yokuya2006 | 2007-07-24 22:35 | 趣味の読書 | Comments(0)