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6/12 バイオエタノール廃液考

今日の夕刊によれば、農水省はバイオエタノールなどの生産を支援するため、バイオ燃料の製造工場を農業用地に建てられるようにしたり、補助金を製造業者に支給したりする計画だ。
あれはダメ、これはダメの決め事が多い我が国には珍しく、法令を設定整備して結果を誘導する、所謂インセンティブな立法姿勢は評価できる。

しかし、ことバイオエタノールについては、私には大きな危惧がある。
現在の米国のとうもろこし由来のバイオエタノールの進展は、食料と競合する、他の作物がとうもろこしに雪崩込む、そら穀物価格が高騰した、配合飼料価格も上がったと大騒ぎだが、しかし副産物のDDGS(ドライド・ジスチラーズ・グレイン・ウイズ・ソリュブル、つまり乾燥させた可溶物を含む蒸留副産物といった意味)が、家畜用の飼料として有効利用されており、つまり第一世代のバイオエタノールは、廃液は出ずに非常に「穀物の利用効率が高い」のは事実だ。

現に、我が国も配合飼料の蛋白質原料(炭水化物はエタノールになっているので)としてDDGSを使っているし、EUも同様だ。EUなどは、自国でバイオエタノールを生産する意義の一つとして「米国からDDGSを輸入しなくて済む、飼料原料の米国依存を軽減できる」ことを挙げているくらいなのだ。

我が国でも、第一世代のバイオエタノール施設がいよいよ稼動し始める。北海道ではホクレンが十勝清水で甜菜と小麦から、苫小牧ではオエノン・ホールディングスが米から、そして新潟でも米からバイオエタノールが生産される。そして、おそらく副産物の飼料化も可能であろう。

しかし、第二世代、リグノセルロース系と言われる原料(米国が目論む「牧草」ならまだしも、我が国の廃木材、風倒木、未利用の竹材、或いは生ごみ、家畜糞など)から得たバイオエタノールは、副産物はどうしてくれるのだ。蒸留物のエタノールは良いが、廃液はもちろん飼料化できない。蒸留残渣は原料がピュアなものでなければ利用できないのだ。

酵素剤と改良酵母で、第二世代も目前だとの話も聞くが、バイオガスで失敗した廃液処理のツケを、バイオエタノールでも繰り返してはならないだろう。廃棄物が形を変えて、より手に負えない液体廃棄物として提出される事態は、何としてでも避けねばならない。
by yokuya2006 | 2007-06-12 23:51 | エネルギー | Comments(5)
Commented by ブロガー(志望) at 2007-06-13 06:19 x
お邪魔します。

>廃棄物が形を変えて、より手に負えない液体廃棄物として提出される事態は、何としてでも避けねばならない。

 結果的に「減容(容積の減少)」になれば良いのではないでしょうか。
「高レベル放射性廃棄物を何倍にも増やす」核燃料の再処理に比べれば
マシなのでは。
Commented by yokuya2006 at 2007-06-13 22:33
ブロガー志望さん、おいでませ。
バイオガスでも減容化は数パーセント、第二世代のバイオエタノールの減容化は素材によって様々でしょうね。
私は、第二世代バイオエタノール廃液を、さも有機質肥料だとばかり「耕地」に安易に還元されることをとても恐れています。土壌微生物の攪乱効果はバイオガス廃液と同様でしょう。メタンはCとH、エタノールもCとHとO、要するに炭素源はリサイクルされますが、窒素とミネラルが国土に蓄積するのです。
私は、核燃料の比喩については、比較すべき尺度を持ちません。バイオマスは、大量に身近にあるものだけに、安易に取り組んで処理を誤ると大変だと考えています。
原子力も、どうやら人間の管理能力が及ばないものであるようなら、分を弁えて手を出さぬが良いとは思いますが。
Commented by urasimaru at 2007-06-14 10:22
うーんと、木くずとかを原料にバイオエタノールをつくるには、それ用の特殊な微生物を使わなくちゃならなくて、そいつらの死骸をどうするんだってことですか?
Commented by yokuya2006 at 2007-06-14 19:45
urasimaru様 微生物の死骸も含まれますが、バイオエタノールの生産では大量の液状の副産物が出ます。基本的に焼酎と同じなので、今でも困っている焼酎粕廃液と同様の性状のスラリーが、沢山出ます。
食料由来の副産物なら飼料化が可能ですが、ゴミ由来の副産物はやっぱりゴミです。飼料化できないので堆肥化です。畑しか受入れ場所はありません。今でも堆肥は溢れているのに、どーすんの、てことです。
Commented by urasimaru at 2007-06-14 22:04
なるほどー。世間では夢みたいに言ってるけどそういう現実があるんですね。ありがとうございます。
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