3/30 世界バイオ燃料政策東京フォーラム概要

3/20霞ヶ関で開催されたフォーラムWorld Biofuel Policy Forum in Tokyoに出席した。
農林水産省環境政策課と農林水産政策研究所の主催であった。

報告者とパネル出席は、
ブラジル大使館一等書記官、米国農務省経済研究局上級エコノミスト、欧州エタノール生産組合理事長、フランス農業省バイオマス・バイオ燃料課長。
そしてこの分野での最「後進国」と言える我が国からは、農水省環境政策課、農林水産政策研究所主任研究官、パネルの司会は日大生物資源科学部教授と言った顔ぶれだった。

英語・仏語の同時通訳を付けて10時から17時を過ぎるまでのボリュームで、大変充実したフォーラムだった。詳細はとても書ききれないが、以下に概要を記す。
これは「私はこう聞きました」と言うもので、事実と異なる表現があればお詫びします。

当日の結論として、今後の日本の方向(農水省の思惑)が示された。
むりやりまとめれば、
・日本での第一世代バイオエタノール原料としては、米、ムギ、甜菜であり、特に多様的価値のある米に期待。
・将来的には第二世代のリグノセルロース原料こそ、日本が積極的に技術開発を進めるべき。
・エタノールの燃料への利用は、ガソリンへの直接混合方式で良く、ETBE技術はもはや価値がない。といったところか。

○ブラジル
シュガーケーン由来バイオエタノール分野で、国内のガソリン代替で30年の歴史と、EU・米国への輸出など、圧倒的な実績を持つ先進国ブラジルが、いかにも自信たっぷりに述べていたのが印象的だった。
所謂「第一世代:糖質や澱粉由来」のバイオエタノールについて、今後も自国での拡大を進めつつ、且つカリブ諸国やアフリカ諸国にも技術供与しており、その狙いは「バイオエタノールの国際市場を形成し、その中心的役割を担う」ことにある。
BDF(バイオディーゼル燃料)では遅れていると言いながら、大豆由来や、新規の油糧作物(既に有望な作物を見出しているらしい)にも熱心に取り組んでいる。
第一次石油危機を契機に取り組まれたバイオエタノール事業は、ブラジルの農業国としての伝統「困ったときは農業で活路を見出す」によるものとか。
大規模な耕地面積を持ち、農業国としての基盤があり、輸出立国で、これを推進する強い政府が、成功の条件であるとのこと。
熱帯雨林やアマゾン流域の無分別な開発によるものとの非難があるが、これらは土壌条件や輸送インフラに劣り「さとうきび」栽培には不向きであり、実際には適地の耕地を開発して生産されている。環境破壊ではないことを力説していた。

○米国
政策転換でとうもろこし由来エタノール増産に拍車をかけ、世界一の生産量に躍り出た米国は、しかしバイオエタノールの最大輸入国でもある。
古くはT型フォードをエタノールで動かした伝統も、禁酒法とその後の石油依存で失われた。
73年のオイルショック、90年の改正大気浄化法、06年のブッシュ大統領の一般教書演説で明確な方向性が打ち出され、インセンティブも充実されて一気に加速した。
背景には中東情勢を睨んで石油依存度の軽減と、エネルギー安全保障の考えがある。
06年のエタノール生産能力は全国で56億ガロン、建設中の工場の生産能力を含めると62億ガロン、原油価格を50ドルと見たときに2017年には120億ガロンの生産予測を持っている。
昨年からエタノール生産がとうもろこし相場に影響するようになったが、今後は牧草、とうもろこし穂軸などリグノセルロースへの取り組みを進めてゆく。
これらは2010年には実用化できると考えている。
さとうきび、シュガービートは、米国では経済性が無いと判断している。
穀物を原料とする第一世代バイオエタノールは食糧と拮抗するとの批判があるが、副産物のDDGSは飼料原料として無駄なく消費され、むしろ利用効率、経済性共に優れている。
米国ではエタノール混合ガソリン(直接混合)方式を推進しており、ETBE(エチルターシャリーブチルエーテル)方式は、先に導入されたMTBE(メチル以下同)による環境汚染問題がトラウマになっており否定的である由。

○EU
バイオディーゼル(BDF)では先行しており、バイオエタノールは後発ながらも取組みを加速するEU。
カーボンニュートラルによる温暖化防止や石油価格の低下など、代替燃料としての価値のみならず、農業生産の新たなアウトレットを提供し、且つ新しい雇用を創出する効果があるという。
また米国DDGSへの飼料依存度を下げられる期待がある。
資源作物は、小麦などの穀類とシュガービートである。
2020年までにEU加盟国には10%のバイオ燃料使用義務が課せられたが、これは決して楽な目標ではない。
バイオエタノールの国際的な市場形成が重要であるが、持続的農業によってもたらされたものであること、環境破壊を伴わないなど、不適当な生産体制を監視する認証制度が必要である。
第二世代はあくまでも第一世代を補完するものだが、第二世代技術の開発が急がれる。
食糧との競合を避け、また作物を多様化させる必要がある。

○フランス
基本的には上記のEUと同様。
ディーゼル車が多いフランスは、今後ともBDFが主体となる。
バイオ燃料は車にとって唯一の再生可能エネルギーである。
バイオ燃料の是非を問う時期は過ぎた、どうやって使ってゆくのかを国際的に協調してゆく時期に入っている。
2006年には、国内の全ての燃料に3%のバイオ燃料を混合した。
今後はB30(バイオディーゼル30%混合)と高濃度エタノール混合「スーパーエタノール(フレックス)車」を推進しつつ、E10(エタノール10%混合)とB10についても検討を進める。
スーパーエタノール車向けフレックス燃料開発については、著名なアラン・プロストを指名擁立して推進しており、自動車メーカーの協力も得て2010年には結果を出せる。
エタノールについては第二世代の開発を急いでおり、2020年にはバイオ燃料の1/3を担わせたい。
EUはこれまでETBEを進めてきたが、今後はエタノール利用は直接混合方式と自動車の改良で望むべきである。施設が必要なETBEは途上国では利用できず、ETBEには未来はない。
何かを成すには必ず問題が生ずるもので、否定的だったEUの自動車メーカーも今ではE10が可能と言っている。古い自動車で対応できなければE10不可を表示すれば済むことだ。

○日本
最後進国たる日本では、税制上のインセンティブはない、エタノール生産量も試験規模に甘んじており、混合義務化がようやく見えてきたものの「まだE3で実証試験が必要」などと言っている状況だ。
この1月に総理の施政方針演説で「バイオ燃料の利用率を高めるための工程表の策定」を言明、バイオマス・ニッポン総合戦略として総理に「大幅な生産拡大に向けた工程表」を報告、ようやく動き始めた。
日本でバイオマスに取り組む意義は国産であること。
国内原料を最大限に利用し、民会企業による施設稼動を後押ししてゆく。
第一世代向け作物としては、重量当たりのエタノール製造量が一番大きい米とムギ、耕地面積当たり製造量の高い甜菜が有望である。
わが国には持続的農業として世界に誇る水田システムがあり、その環境保全等の多機能性にも期待して多収米を検討したい。
第一世代の開発は、これを第二世代につなげる意味からも重要である。
第二世代向け原料としては木質系の有効利用である。
第二世代こそ発酵技術をお家芸とする我が国が、食糧と競合しないリグノセルロース由来エタノールの技術開発に注力すべきで、木質系原料については「集める技術」の検討が重要である。
国際的な現状を踏まえて、エタノールの利用はETBE(EUで実績があり、石油連盟が強く推奨している)ではなく、ブラジルや米国で実証されている直接混合方式を推進すべきである。

※ETBE(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)
エタノールを加工してETBEを作り、これをガソリンに混和して使用する。
ガソリンにエタノールを混ぜる(直接混合)と、いろいろな問題が起こりうるとして、ETBE方式が推進されてきた経緯があるが、要するに「バイオエタノールを如何にして使うか、との見地に立てば些細な問題」ということか。国内では業界の既得権も絡んで?議論が続いているが、農水省としてはバイオエタノール推進の立場から「米国方式(直接混合)で良いではないか」と言いたいところ。事実、当日のEUやフランスの担当官は、「これまではETBEしかなかったので使っていたまで」「施設の必要なETBEは途上国では使えない」「ETBEには未来がない」と言い切っていた。
by yokuya2006 | 2007-03-30 08:53 | エネルギー | Comments(7)
Commented by 酪農生活100 at 2007-03-30 13:41 x
 おが屑やチップなどの粉砕された木質材料、または稲ワラ混じりのふん尿には、原料としての価値はどの程度ありそうでしょうか?とても気になりました。
 ETBEは日本の場合、
「レギュラーガソリンはメーカーを問わず共通(同一)である」
「製品の品質が一定に保てる」
ということで、その方がイイと業界は言っているようです。
 スタンド(メーカー)ごとに混合率が違うというのは、差別化としては面白いですが、車には優しくないかもしれませんね。
Commented by カウベル at 2007-03-30 20:59 x
いくら温暖化防止に役立っても、食糧と競合しては何にもなりませんね。その辺を考えた推進策にしてもらいたいものです。家畜飼料との競合は仕方ないかもしれません。購入する側としては痛いですが。
Commented by yokuya2006 at 2007-03-30 22:07
酪農生活100さん、所謂「木質系リグノセルロース」そして「家畜糞尿も含めた未利用バイオマス」のバイオ燃料化は、そんなに簡単なことではないと思います。
酵素処理と発酵技術の組み合わせで、効率アップなどの話も聞こえてきますが、副産物処理のコストが無視できません。
現にバイオガス(メタン)は、その後の廃液処理が課題となって、我が国では自治体での取り組み意欲が鈍っています。メタンは取れた、排熱もコージェネできた、しかし廃液を撒く畑がないので大量の凝集剤を添加して汚水処理するのでは、コストが合いません。
第一世代バイオエタノールは、例えばトウモロコシや米は、副産物も蛋白源として飼料化できて収入になるから良いのですが、リグノセルロースの第二世代の副産物は、さあ利用価値があるでしょうか。結局、畑に撒くのでは、我が国では難しい気がします。
Commented by yokuya2006 at 2007-03-30 22:17
カウベルさん、しばらくは米国の穀物相場は、エネルギー向け需要に大きく影響されることが否めません。
しかも、第二世代の原料になる構造性炭水化物は、反芻動物の飼料でもありますから、ここでもまた競合することになります。
どうやら「炭素源の奪い合い」になるようです。
となれば、副産物の窒素源は比較的安価に供給されるとして、良質な糖質と繊維源を自給することが必要になるのでしょう。勿論、良質な蛋白質を含んだ自給飼料であれば更に言うことはないわけですが。
Commented by coco at 2008-02-02 16:42 x
食糧との競合もあまり意味はありませんが、家畜飼料の競合もぜひ視野に入れて考えてもらいたいです。
家畜飼料の高騰により、出荷時には経費のほうが上回ることが最近ではどの畜産業界でも続いてるそうで、赤字続きの畜産家はやめていっているのが現状だそうです。
畜産農家にこの高騰の現状を耐える体力は残っておらず、国内の自給率が下がる一方の中、この影響によりさらに下げることが予想以上のスピードで進行しているようです。
これでは、肉もそうですが、牛乳などが値上がり、さらに家計を苦しめそうです。
Commented by yokuya2006 at 2008-02-03 21:21
cocoさん、何よりもBRICsの台頭が市場を変質させたでしょう。そしてバイオ燃料の登場により穀物は引っ張られて、不作も拍車をかけたものの基本的には作付面積と収量の限界が露呈したことが、穀物価格をかつてない水準にまで押し上げてしまいました。
もう、これは戻る事がありません。明らかに世界の穀物需給状況が変わったのです。
とうもろこしも、大豆も、麦も高騰しています。
当然ながら、小麦製品のうどんもスパゲティもインスタントラーメンも、みな値上がりします。大豆製品の豆腐も納豆も、穀物を食べさせている肉も卵も牛乳も、みんな上がらざるを得ません。
家計も大変でしょうが、酪農家、畜産農家、これを取り巻く業界も、みな大変です。
値上げだけならまだ良いのかもしれません。実際、日本の商社は穀物を他国に買い負けているのです。買えなくなる日が来るかも知れません。
Commented by coco at 2008-02-03 22:12 x
お返事ありがとうございます。
実は伝聞調に書きましたが、実家が酪農家なんですね。この家畜飼料の高騰により、親の代での廃業が決定しました。もともと酪農家や畜産農家、農家などは政府のやり方が負担を掛けることしかしていないことに根底があるんですが、このところの飼料の高騰で決定的になりました。
今バイオエネルギー関連の仕事をしている関係でお邪魔させて頂いたのですが、前から上記の理由でとても興味のあるところでした。
日本の商社が他国で買い負けしているんですね。
日本でのバイオ燃料は今後どうなっていくんでしょうか?日本には資源がなく、ばかばか話ですが、もし海外から原材料を買ってくるとしても買い負けの現状があるならば、その面も心配ですね。

ここからは消費者としての意見になりますが、自給率も下がり、穀物も買い負けし、中国の食品問題などがあり、生活はどうなるのか不安になりました。