1/21 ららら科學の子

文春文庫 矢作俊彦 ららら科學の子 2003年9月の出版だが、文庫での新刊だ。
学生運動で官憲に追われ、30年前に中国に逃亡した男が日本に戻ってくる。旧友の携帯電話に辛うじて繋がったテレホンカードが彼を渋谷に導く。変貌した東京、そして日本の社会、携帯電話を通じて彼に衣食住を提供する旧友、健気に彼を庇護する旧友配下の都会派ヤクザ達、ふと知り合った少女、つけねらう中国マフィア、彼自身の中国の寒村での記憶や、散りばめられた逃亡当時の古き日本のエピソードがフラッシュバックされながら物語は進む。彼は昔の自分を探し歩き、そして幼かった妹の今を探し当てる。

主人公にも(多分作者にも)私の歳が近いので、あの時代の記憶を共有確認しつつ、主人公に感情移入して面白く読み終えた。傑作です。ハードボイルドで一途な主人公がカッコイイ。

しかし、主人公の中国での生活に比較して、まったく生活感を欠いた東京での一連の描写は、エンターテインメントに徹した故か、はたまた作者の所属する年代の特徴なのか。私の数年上の所謂「団塊の世代」には、今もって反体制を気取る輩も多いので、この作者を見極めるためにも、他の作品を読んでみよう、と思った。

最初に渡された携帯電話の001に登録された少女の電話番号が、中国マフィアに戻されている。これが厄災の種にならねばよいが、と心配したのは私だけだろうか。
by yokuya2006 | 2007-01-21 22:14 | 趣味の読書 | Comments(0)