1/4 移動都市

創元SF文庫 フィリップ・リーブ著 移動都市 を読了した。
都市が動く。往年の名作SF、ブリッシュのCities in Flight(宇宙都市)では、都市はスピンディジィなる恒星間駆動エンジンで舞い上がり宇宙を放浪したものだが、この作品では都市はキャタピラの上に乗って最終戦争で荒れ果てた地球の地面を徘徊し、ある時は敵を追って、或いは敵から逃れて黒煙を吐きながら疾走する。
都市同士は戦い、負けた都市は食われて市民は奴隷となり、食料・燃料から都市を構成する鉄材までもが同化吸収されてしまう。大きな都市は、上層には貴族階級が、低層には労働者階級が住み暮らしており、最下層の廃棄物処理に従事させられているのは服役囚たち。

失われた歴史を遺物から学ぼうとする史学ギルド、一度は地球を破滅させた超兵器を発掘し組み立て、死者を機械従僕に仕立てて他都市の侵略を図る工学ギルド、ひょんなことから自分の属する都市の現実を目の当たりにして、かつて崇拝していた英雄と敵対せざるを得なくなった史学ギルド見習いの少年、地面に定着して暮らす反移動都市同盟の要塞、空中に浮かぶ観光交易都市、都市間の移動手段として、また戦闘にも繰り出される飛行船。

なんともまあ色彩豊かな冒険大活劇だろう。四部作であるそうで続編にも期待したい。

都市淘汰主義を旗印にして突き進む移動都市ロンドンは、植民地時代の大英帝国と言うよりは、グローバリズムの名の下にカジノ・キャピタリズムを推し進めて一人勝ちを狙う現在のアメリカ合衆国を彷彿させる。となれば反移動都市同盟は、さしずめ持続可能な社会を目指す北欧諸国あたりが役回りか。
日本はどのキャスティングになるか。先進諸都市を見習って思わずも強力な移動都市を構築してしまい、危機感を募らせた先輩都市たちに包囲網を張られて、自暴自棄の大戦に突入せざるを得なくなる勤勉なる地方都市か。
はたまた、自らの伝統に目覚めて、独自の価値観の元で自然と共生する地方都市か。
そんなことを考えた。
by yokuya2006 | 2007-01-04 13:29 | 趣味の読書 | Comments(0)