1/15 異星人の郷

f0057955_1358149.jpg原題はEifelheim マイクル・フリン著、島田洋一 訳、創元SF文庫

原題のアイフェルハイムはドイツの小さな村の名前。
昔は別の名前で呼ばれていたその村に、異星人の船が不時着した。

時は14世紀、キリスト教神学と世俗政治の混沌の中で、知識人であるデートリッヒ神父は、彼ら異星人(昆虫に近い姿で、バッタの友と呼ばれる)を救うべく、周囲の村民に領主に働きかける。

一方、現代のフィラデルフィアに住む統計歴史学者のトムは、中世にペストに襲われ、その後は復興せずに忽然と消えたドイツの小村に疑問を持ち、当時の書物から謎を解こうと奮闘していた。同棲する宇宙物理学者のシャロンは、新しい宇宙論のヒントを掴んで熱狂していたが、トムの発掘した古文書の中に、彼女らが最近になって新理論から導いたばかりの回路図を発見して愕然とする。

大作であり、中世の事象の描写がとんでもなく綿密で難解である。しかし、投げ出せずにジワリジワリと読み進めていくと、薄紙を剥ぐように結末に至る小説だ。中世の描写や宗教用語のみならず、ラテン語、ドイツ語、ロシア語などが入り乱れる(主人公の一人、トムがやたらと外国語を連発する)ので、これは訳者が大変だったのではないだろうか。

異星人は宇宙船を修理して故郷に戻れるのか。小村に襲いかかる黒死病、そして異星人達を襲う危機に対して、デートリッヒ神父と異星人達は必死の努力を続けるのだが、、、
静謐な最終章が物語を引き締めている。難解ながら傑作と言って良かろう。
by yokuya2006 | 2011-01-15 13:59 | 趣味の読書 | Comments(6)
Commented by haru123fu at 2011-01-15 17:18
さすがにyokuyaさんですね。凄い読書の量にビックリします。
以前に、忙しい人ほど、沢山の趣味を楽しんでいると、聞いたことが
あります。暇な人ほど、いい訳がましくなにもしてないと。
どうやら、私は後者のようです。
最後に読書をしたのは、いったいいつのことだったのか?
それすらも忘れてしまいました。
Commented by yokuya2006 at 2011-01-15 22:04
こうやって作品を振り返るのも、読書の楽しみの一つですね。
出張や電車での移動が多い会社員ですから、本を読む時間はいくらでもあるわけです。
気に入った作家がいれば、どんどんネットで取り寄せては読んでいますよ。一昨年からは、佐々木譲さんにハマっています。
Commented by urasimaru at 2011-01-16 13:10
難解ですかあ。新聞評をみてリストに入れてみたんですが…。うーん。でもまだ読んでない本、頓挫してる本がたくさんあります^^;
何冊も本を持って歩きたくないのでそんなことに。
Commented by yokuya2006 at 2011-01-16 17:18
中世ヨーロッパの政治や宗教に興味のある方には、私が難解だと思ったところも楽しんで読める事でしょう。異星人と神父の間で、宇宙論と神学がお互いに説明されるくだりは、何か変に納得させられてしまったりします。

私は、この本を「老後にもう一度ゆっくり読む本」に認定いたしました。
Commented by シュテーカフェー at 2011-01-16 18:34 x
 これ是非原文で読んでみたいと思いました。このところ中世と現代が交錯する本にはまっています。
Commented by yokuya2006 at 2011-01-16 18:44
シュテーカフェーさんなら確かにお読みになれますね。きっと。
私、だめなんです、あの時代。英語もダメだけど。

原題名でググったら、ペーパーパックで原書を読んだ方のレビューが見つかりました。
とても正確な内容紹介で、流し読みの私のコメントなど恥ずかしい限りです。
http://www.hi-ho.ne.jp/tomita/PaperBacks/Eifelheim.htm