1/15 年末年始に読んだ本

f0057955_9535374.jpg年末年始に読んだ本を、読んだ順にメモしておく。

天冥王の標Ⅲ 小川一水 ハヤカワ文庫
シリーズ第三弾、前作より少し時間の進んだ太陽系内が舞台。体に充電して、酸素のない宇宙環境でも活動できるように肉体を改造した者たち「アンチ・オックス」、中でも海賊狩りを任務として彼ら独特の強襲砲艦を操るサー・アダムス・アウレーリアとその一統が活躍する。

はるか未来の植民星から第一作が始まり、第二作では過去の地球での災厄を語り、今作では散りばめられた謎が少しずつ正体を浮かび上がらせてくる。電気仕掛けの羊を送りこんだ眼に見えない存在と、これに対抗する勢力と、最後にはこの辺りの存在と人類が三つ巴になる予感。これからも楽しみにしておこう。

f0057955_9533010.jpg仮借なき明日 佐々木譲 集英社文庫
直木賞受賞で、過去の作品が改装・文庫化されていて有難い限り。

海外進出した工場の現地での不正を暴く企業戦士の物語。
彼は、都内のサラリーマンとしての本業の傍らで、ゲームソフトの副業収入で都心のマンションにクールな城を築く、知的でタフで故に企業の枠に収まりきれない男だ。

彼の能力を買う上司から特命を受け、外地に飛んだ彼を妨害と罠が待ち受ける。既得権を守ろうとする組織との攻防、彼がとる行動は、そして彼の運命は、、、いつもの通り、ページをめくる手が止まらなくなる、佐々木譲の快作である。

f0057955_1413454.jpg疾駆する夢 佐々木譲 小学館文庫

復員して焦土から身を起こし、いつか自動車を作る夢を追いながら、多門大作は「自動車修理・整備全般」の看板を掲げて本牧に多門自動車を創業した。

戦時の廃品からリヤカーを作り、自動二輪を作り、オート三輪の製造に乗り出した彼は、才覚を発揮して周囲の工場を吸収合併し、また仲間を募りながら、数多くの困難を乗り越え、多門自動車を育て上げていく。

文庫本の上巻下巻が共に700ページある長編だが、その長さを感じさせない。引退した彼を、その娘が語らせながら、時代ごとにエピソードが重ねられていく趣向である。堪能いたしました。

f0057955_9551076.jpgハーモニー 伊藤計劃 ハヤカワ文庫

近未来、人類はナノテク装置を体内に取り入れ病気を根絶した理想郷を築いていた。この装置はまたサーバーのIDとして機能し、構成員が個人情報を公表し他者を無制限に信頼する約束の上で成り立った高度な社会システムが、世界を覆っていた。

その世界に反逆する少女たちがいた。
彼女たちは死を選ぶが、主人公は生き残った。
時は流れ、彼女は図らずもシステムを維持する監察官の職務の中にいた。そして、ある事件が死んだ旧友の影に重なるとき、思いもしない事実が浮かび上がる。

SF近未来ギミック満載でよく描き込まれた、早世した著者の遺作である。人間とは、人の幸福とは何かを問いかける、切れば血の出るような物語だ。惜しい方を亡くしたものだと思う。
by yokuya2006 | 2011-01-15 12:45 | 趣味の読書 | Comments(0)