7/9 GMアマ FP967(CDC Triffid) 始末記

人類に昔から恩恵をもたらしてきたアマ、繊維(リネン)が採れ、油糧作物でもあるアマ(亜麻、或いは亜麻仁、英語ではflaxseed、or linseedと言う)の、SU剤(スルホニルウレア系除草剤)耐性の遺伝子組み換え品種名 FP967(CDC Triffid)は、カナダのサスカチュワン大学で1998年に開発されたのだそうな。

カナダ政府は1996年に、米国政府は1998年に、この品種の安全性を確認し承認しているが、輸出国のカナダは当然ながら需要圏EUのGM(遺伝子組み換え)作物に対する評価を重視して、2002年には当該品種を取り下げたと言う。つまり商業的には展開されなかったのだ。

ちなみにSU剤は、我が国でも所謂「一発処理剤:数多くの雑草に効く除草剤」の主成分として多用されており、近年は水田などで「耐性雑草」の登場に悩まされているようだ。

ちなみにトリフィドとは、我々SF読みには懐かしい英国作家ジョン・ウィンダムの人類滅亡テーマの名作「トリフィドの日:The Day of the Triffids」に登場する、移動能力と殺人能力を持った油糧植物の名前だ。流星雨を見た人類が失明し、これを契機に野生化したトリフィドに襲われ、対抗しつつ文明を立て直す主人公達の物語。これを意図して名付けたのであれば、悪い冗談である。

さて、このトリフィド・アマ。去年に欧州とそして日本で、輸入のアマに遺伝子混入が認められたのだ。
ほんの僅かな話である。
販売されなかったGM作物なのに何故??? 要するに管理が悪くて、交雑してしまったと言う事なのだろうから、これはGMが嫌いな勢力には「それ見た事か」の惨事である。
とっ散らかった遺伝子をどうしてくれる。責任者、出てこい!

このGMアマは、我が国では安全性が未審査であるから当然「未承認」である。厚生労働省は未承認の遺伝子組換えアマは一切許さないから、僅かであろうと「検出されれば」その場で輸入停止である。ちなみに検出限界は0.01%だそうである。

搾油粕である亜麻仁粕を使用していた我々飼料業界も、農水省から通達があって飼料への使用が禁止となった。ところが亜麻仁粕は農家の方々に根強い人気がある植物性油粕原料なので、我々飼料メーカーもユーザーに事情説明をするのが大変だった記憶が残っている。今でも国産の亜麻仁粕の供給は細まったままである。

今から我が国で安全性の評価をしようにも、今後も販売されることのない品種なのでどうしようもない。カナダと米国で安全性が確認されているのだから、我が国でも認めてはどうかとも(私なら)思うのだが、そうは行かぬらしい。

実はアマは、昨今注目を浴びる機能性脂肪酸「ω3:オメガスリー」系列のアルファ・リノレン酸の給源である。α-リノレン酸は、健康に良い、頭の良くなる事で有名なドコサヘキサエン酸:DHA、エイコサペンタエン酸:EPAの材料になる。同じ生合成ルートを使うω6脂肪酸と拮抗するから、現代人はω3を摂ったほうが良いと言われている。健康食品として、アマは世界的に評価を上げつつある。

しかし、カナダ産原料アマは日本国内で搾れない。従って、我が国の搾油メーカーは現在は厳密に検査されたアマを輸入するか、或いは北米で搾油した原油を輸入して国内で販売している、と言うわけである。そして、一年たった今、ようやく遺伝子混入のないカナダ産アマが輸入される体制が整いつつあるようだ。関係者の努力に敬意を表し、混乱はあったがコンプライアンスを遵守する我が国の受け入れ体制の成熟を評価したいと思うのであります。

昨日と今日に聞いた話をまとめてみました。以上、覚書終了。
by yokuya2006 | 2010-07-09 22:14 | 日常の雑感、覚書 | Comments(0)