7/5 家畜福祉と口蹄疫と

取引先から声がかかったので、都内の勉強会に参加してきた。
業界の集まりではなく、消費者団体の主催のミニ集会で、総勢30名ほどだったろうか。

〇畜産革命 集約畜産から家畜福祉畜産へ
演者はこの分野の第一人者で、この方面の訳書も多い。
猛威を振るう口蹄疫、それより恐ろしいと言いきるBSE、鶏インフル等も切り口にして、国際獣疫事務局OIEの果たす機能とEUにおける家畜福祉畜産の進展を、唯一世界から取り残され国内も無関心な我が国の現状と比較して述べた。

EUでは主流の家畜福祉の概念はもはや定着し、また輸出畜産物の差別化要素としても機能させており、政府としての取組みが遅れる米国でも一部の州や大手外食産業や生産者では自主的・先駆的なガイドライン策定が目立つ。中国や韓国でも実は注目度は高い。日本では消費者団体こそが「GMOや生産国差別でなく、国内の畜産の現場にも目を向け勉強し発言する必要」を説いた。

鯨議論と同じだ、などと言った我が国独特のピンボケ批判は止めて、家畜福祉がヒトの栄養と健康に直結するとの「国際的な認識」を醸成したい、とした。
具体的には、EUでは採卵鶏のバタリーケージ飼育と雌豚のストール飼育は2012年までに段階的に廃止の流れである。
我が国では農水省のアニマルウェルフェア飼養管理指針が、鶏で2008年度、ブロイラーと乳用牛とで2009年度、2010年度には肉用牛と馬が策定予定だが、知っているものがどれだけいるのか、またその概念は議論不十分と言わざるを得ない。
集約的畜産、過密飼養、加工畜産への批判は、時間がなく語り切れなかった感あり。

〇口蹄疫の防疫対策を考える
演者は、宮崎県での口蹄疫の発生を振り返り、殺処分の根拠となった家畜伝染病予防法と防疫指針の現実との乖離を指摘した。
法は昭和26年の制定であって、現在の飼養密度をまったく想定していない。一般車両消毒が出来ず封じ込めに失敗、埋設場所がないことによる殺処分の遅れ等において、超法規の特別措置法を必要としたがこれを果たして普遍化できるか。

もとより、大規模化した現在の畜産経営では「殺処分一辺倒の防疫対策」では産業としての畜産が成り立たない、守るべき畜産が消滅してしまうのは本末転倒で法改正が必要な所以である。
ワクチン接種による抗体なのか、ウイルス感染による抗体なのかを判別できる新しいワクチンの開発が急務である。

周辺に生息するイノシシ・鹿などのモニタリングも重要だが、これは農水省管轄でない。
殺処分した埋設地の環境汚染も、継続したモニタングも必要である。
リングワクチネーションは行うべきだったが、結果として失敗し、その周辺からポツリポツリと発症を見た。7/4にも更に発症した。これで終息すると考えるのは楽観に過ぎるだろう。
このような大規模疾病に対処しうる生産者しか生き残れない、その事を憂いてもおられたようだ。
by yokuya2006 | 2010-07-06 21:22 | 牛ネタ | Comments(6)
Commented by クルミルク at 2010-07-09 10:33 x
御無沙汰しておりますクルミルクです。
動物の福祉、生産履歴や生産方法による畜産品の差別化
大切だ!必要だ!これからはこれだ!とここ最近言われながら
現実にその方向へのテコ入れって
特に都府県では無いので、始めてしまっている人間としては
辛く厳しい日々が続いています。(乳質その他)
生産者に目覚めてもらうのも必要ですし
行政が取組農家に早急に助け船を出さないと
特に都府県では厳しいです。
こういう話って、
どこに持ち込んだら対応してくれるのかな?
思いきって農水のHPにでも書き込んでみようかしら
ちょっと愚痴になっちゃいました。ごめんなさい
Commented by yokuya2006 at 2010-07-09 18:20
行政が取り組み農家に助け舟」ってのは、例えばEUの環境支払いなどの意味でしょうか。
牛一頭当たりの放牧面積、家畜福祉の立場から見た飼養管理の度合い?などの基準を満たす生産者に、直接支払いするのは良い方法だと思いますね。

生産物を差別化して利益を還元できれば良いけれど、牛乳はどうしても合乳されてしまうから、ある程度の生産量をまとめなければならないのが難しいし、販売にはリスクも当然伴います。生産者がそこまでやってられん、ってこともあるでしょう。

EUの環境支払いにも学んで、正しい意味での戸別所得保障の実現は、篠原副大臣が頑張ってくれる事を期待しています。
Commented by クルミルク at 2010-07-10 05:39 x
仰る通り
”助け舟”の方法はEUを参考にと思います。
放牧の牛乳を高機能食品として別枠で扱うほど
現状生産量は多くないし、
足寄のようにブランド化は難しいと思います。
業界の良心として放牧を応援して行く事によって
ゆっくりその方向へシフトできる牧場は移行し
出来ない牧場は、放牧牧場の牛乳も原料に入っている
事の恩恵を受けられるような形が限界かなと感じています。
そうでもしないと、
放牧が育つ事が出来ないと感じてます。
他社製品ですが”足寄放牧牛乳”は御飲みになりましたか?
Commented by yokuya2006 at 2010-07-10 09:24
我が家は、生活クラブのパスチャライズド牛乳が定番です。足りなくなれば、赤いメグミルクを買ってきます。
足寄放牧牛乳は飲んだ事がありません。

スーパーで牛乳価格を見ていますが、安い成分調整牛乳から売れて行く、中身より「まず価格」の現実を見せつけられています。
幸せな牛達から搾った牛乳は、それだけで価値があると思います。しかし、こんなことを書くと「じゃあ、幸せでない牛」っているのてなことにもなりかねませんし、、、差別化って難しいですね。
Commented by クルミルク at 2010-07-10 13:36 x
EUに準じてと書いた事がどうも違うような気がしてしまって
もう1回書かせて下さいね。
あんな風にバラマキにしなくても、
放牧の基準、例えば放牧認証を受けていれば
”乳成分の未達を問わない”とかでもいいような気がします。
経営としては制約は在るものの地力の在る経営方法だと思うので
足寄放牧牛乳は少しがっかりな味です。
期待値が高すぎるからかな?
早くわが家の牛乳の試飲をしていただけるようになればと思います。
成分調整牛乳は、ビール業界の発泡酒、第3のビールのような事になってますよね。
牛乳の場合税率の問題では無いだけに心配です。
何回もすみませんでした。
Commented by yokuya at 2010-07-10 17:43 x
何度でもどーぞ、クルミルクさん、(^^)
EUは、環境支払いの要素があるので、バラマキに見えるのでしょうか。いずれにしても、我が国ではポジティブでインセンティブな政策を期待しています。

クルミルクさんの牛乳を、早く飲ませていただきたいものですね。