3/12 くらやみの速さはどれくらい

f0057955_2121221.jpg原題は、THE SPEED OF DARK
エリザベス・ムーン著、小尾芙佐訳、ハヤカワ文庫。

主人公は、自閉症のルウ。近未来のこの世界は、胎児の自閉症治療を可能にし、これに間に合わなかった主人公達の世代にも、ある程度のノーマルへの適応性治療が進められていた。
ルウは、自らの価値観を守りながら、ノーマルの世界で職を得て生活している。

この症状の特質としての優れたパターン認識力や、極めて正確な記憶力を駆使して、ノーマルを凌駕する才能を見せながらも、ルウは慎ましやかに自らを律して日々を過ごしていた。
そんなルウに、彼等をノーマルにする治療法が提供されるという。
悩んだ末に、彼はこれを受け入れるのだが、、、

作者の目論見通り、読者は読み進めるうちにすっかりルウに感情移入させられてしまっているから、その後の彼を見るのが辛くなる。彼の選択は正しかったのか、失われた恋、幼年期の終わり、彼の宇宙への飛躍はどう結実するのか。彼の自意識とは何だったのか。

この前に読んだ物語が、ジェットコースター・サスペンスだったので、この小説もつい結末にハッピーエンドを期待してしまったが、甘くはなかった。
しっとりした語り口で、ぐいぐい読ませる、そして読後に考えさせられる傑作である。
by yokuya2006 | 2009-03-12 22:01 | 趣味の読書 | Comments(4)
Commented by ruhiginoue at 2009-03-12 22:58
 ハインラインの「ミスター計算機」みたいな能力?
 
Commented by yokuya2006 at 2009-03-13 00:22
おおっ、アンドリュー・ジャクソン・リビイでしたっけ。
ルウの場合は、少し違って、アルコン人のようなカメラのような記憶力ってな感じです。
Commented by ruhiginoue at 2009-03-14 11:28
 では『レインマン』とか『裸の大将』ですね。
Commented by yokuya2006 at 2009-03-14 13:39
そうですね。サヴァン症候群のような特質が、ノーマルへの適応性治療のためか更に統合されているような感じです。フェンシングで相手の動きをパターン抽出して先回りして攻撃できたり、難解な専門書を内容丸ごと記憶したり、、、