2/22 おまけの人生

f0057955_1924656.jpg本川達雄 著 阪急コミュニケーションズ。
2005年の、著者のおそらく初エッセイ集であるらしい。

本川先生の名著「ゾウの時間、ネズミの時間」的に考えれば、動物の心臓はドッキン・ドッキン・ドッキンと15億回打って止まるのであるから、これは人間では40歳ほどである。
我々は現在、80歳近くの平均寿命を得ており、しかし、やはり実際には老化現象は40歳くらいからスタートするのだから、そして自然界では老化した個体が生き延びる例はないのであるから、既に人類は「おまけ」の時間を、「おまけの人生」を獲得しているのである。

その「おまけの人生」を、如何に生くべきか。
本川先生は、森羅万象が同じ時間の上に流れていることを、全ての生き物が「等速のベルトコンベア」に乗って未来に運ばれているイメージに、疑問を提出する。同じ人間でも「子供と老人」では、時間が違うのだと仰る。時間の重層性である。

この本の後半の4割ほどは「道元の時間」と銘打たれて、平成13年に開催された「道元フォーラム」の講演録がもとになっているらしい。
生物がエネルギーを使うと時間が経過する。生物は時間を使ってエネルギーを生み出す存在である。生きることとは、エネルギーを使ってその生物独自の時間を作り出すのである。
道元は、このことを「尽力経歴:じんりききょうりゃく」と言っているそうな。

自然界には存在しない「老いの時間」を持つことを許された我々は、ではどうすればよいのか。
若者とは違う時間を生きているのだ、と悟ることではないか。

私としても、この年になって無理をして定年までは若者の時間に合わせざるを得ない状況だ。
しかも、若者時間は近年ますますIT化が進んで早くなっている。まあ、今のところ何とかやれそうな自負はある。
しかし、周辺には、若者の時間に不適合を起こして混乱するご老輩も多々見受けられる。
私は、未練がましく現世にすがるまい。
10年先の生き方が見えてきた気がする、深い哲学の書である。
by yokuya2006 | 2009-02-22 21:08 | 趣味の読書 | Comments(0)